■■日本現代中国学会ニューズレター第17号■■

       2006年1月 


目次--------------------------------------------

巻頭言 靖国参拝と神舟6号  小竹一彰
訃報
関西部会から
組織状況

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【巻頭言】 靖国参拝と神舟6号

             西日本部会理事 小竹一彰(久留米大学)

 2005年10月17日、小泉純一郎首相は靖国神社を参拝した。首相に就任してから5度目の参拝であり、中国や韓国の首相参拝に対する事前の強い牽制を押し切って実施した。その後、中国や韓国との関係はいっそう冷却している。これが日中関係の記録に残る日付になることは間違いない。しかし、10月17日という日付は、日本と中国の 2国間関係を越えて、日本と 中国が今後たどっていく進路の分岐点になるかもしれないという意義を持つ可能性がある。中国の有人宇宙船「神舟6号」が5日間の地球周回飛行を終えて無事に帰還したのも、実は同じ日だったからである。靖国参拝と「神舟6号」の帰還が同じ日だったことは(小泉首相が「神舟6号」の帰還が予想された日を選んで靖国参拝を実施したかどうかは、筆者にはわからない)、現在の日本と中国の対照的なあり方を象徴しているのではないだろうか。
 中国が有人宇宙船の単独開発を進める政治上、経済上、さらに軍事上の役割は比較的容易に推察できる。そして、中国自身の強まりつつある大国意識を満足させていることも疑いえない。まして世界のどの国も中国による有人宇宙船の開発という事業の意義を理解することは難しくない。もちろん、これを肯定的に評価するか否定的にとらえるかはまったく別の問題である。また疑問と懸念があるとすれば、宇宙開発における国際協力が進展しつつある時代に(それに参加する各国に対等な権利が保障されているかという問題はあるとしても)、宇宙空間の自力開発に重点を置くように見える中国の姿勢に対してであろう。その結果、アメリカの中国に対する警戒心や日本などの中国脅威論がこれまでより強まるという副産物は生じても当然だろう(中国自身がこの点をどれほど自覚しているかは別問題だが)。
 中国の宇宙開発に関する姿勢のわかりやすさに対して、首相の靖国神社参拝の意義は理解しにくい。靖国参拝が「戦没者を追悼し過去の戦争を反省する」ためだという説明を受け入れることは、靖国神社の性格を知れば知るほど困難になる。それが多くの国に設けられている公的な追悼施設と同列に論じられないことは、さまざまな角度からこれまでも指摘されてきた。そして、首相の靖国参拝が中国や韓国に限定されない国際的な関心を引くに連れて、靖国神社の特異な性格はますます明らかになっていくだろう。そうなれば、首相が靖国参拝にこだわる日本は「わかりにくい国」だとの印象がいっそう強まっても不思議ではない。国際的に理解されなくてもわが道を行くというのは、相互依存がさらに緊密になっていく現代世界にふさわしい選択と断言することはできない。
 中国が単独で宇宙開発を進める方針にも国際的な相互依存に背を向ける姿勢を読みとることはできる。しかし、それはどの国の人々にとってもわかりやすい。靖国参拝問題に関する日本の動向は国際的相互依存に背を向けている上、わかりにくい。日本と中国の今後の進路における分岐点になるのではないかと感じた所以である。


〔訃報〕
 日本現代中国学会常任理事、関西部会事務局代表、石田浩氏(関西大学経済学部教授、中国・台湾経済)。05年10月より台湾台北・政治大学で在外研究に従事していたが、06年1月8日午後7時45分(現地時間)、肝不全のため台湾大学医学部の病院で逝去。石田氏の葬儀は、1月15日(日)午前11時20分から台北市第一殯儀館・大覚庁(台北市中山区民権東路二段145号)でおこなわれた。謹んで石田浩氏のご冥福をお祈りしたい。


〔関西部会から〕関西部会大会、06年度実施決定

                             関西部会事務局

1.決定に至る経過
 関西部会は、愛知・岐阜・富山以西、広島・島根以東および四国全域を管轄
している。九十年代中期から、関西部会は春、夏の二回研究集会を開催し、
近年は少ない時でも五十人以上、多い時は百人程度の参加者があり、関西地
区の現代中国研究の隆盛に一定の役割を果たしてきた。これは、小規模な研
究会からしだいに発展してきたものである。しかしここ一、二年次のような問題
が目立つようになってきた。

・若手研究者対象の春季研究集会は毎年三月上旬に開催しているが、開催時
に中国などに調査旅行に出かける会員も多く、日程を変更すべきである。
しかし、二、三月では他に適当な日がない。
・中堅以上対象の夏季研究集会は、近年報告申込みがあまりなく、参加者数も
特別な企画がある時以外は頭打ちになっている。

 そこで、現在の研究集会をより発展させるためには、「研究集会」から「大会」
とし飛躍をはかるべきである、という意見が出てきた。一回の報告者数が増える
ことで参加者数の増大も見込まれ、「大会」という名称でマスコミなどにも宣伝が
しやすくなることも考えられる。また、特に若手報告者にとっても、「研究集会」よ
りも「大会」のほうが業績としてより高く評価されやすくなる、という側面もある。
 このため、現中学会ニューズレター前号でお知らせしたように、関西部会理事
会・事務局では恒例になっている春・夏二回の研究集会を発展的に解消し、年
一回の関西部会大会とすることを05年春季研究集会時の理事会以来、検討し
てきた。05年全国大会終了後、11月8日開催の関西部会事務局で以上の意
見をもとに関西部会大会実施の可否について集中的に討議した。その結果、参
加理事全員一致で06年度の実施が決定された。ただし、関西部会大会は大き
な試みであり、実施してもし不都合が有れば07年以降春・夏二回の研究集会
体制に戻すこともありうることも確認された。
 これに基づき、日時、会場確定後の05年12月中旬にとりあえず速報というか
たちで会員に実施決定を通知した。

2.具体的内容
 各種の案を検討したが、現在の状況では以下の内容が妥当であることで事務局
の意見が一致した。
 一日のみの開催とし、四分科会(政治、経済、歴史思想、文学)、共通論題ありと
する。当日のタイムテーブル案は次の通りである。
10:00〜10:50 第一報告(報告30分、コメント・討論20分)
10:50〜11:40 第二報告(同)
11:40〜12:30 第三報告(同)
12:30〜13:30 昼食休憩(関西理事会開催)
13:30〜14:20 第四報告(同)
14:20〜15:10 第五報告(同)
15:10〜15:30 休憩
15:30〜17:30 共通論題(シンポジウム、特別講演など)
18:00〜    懇親会
 これで五報告×四分科会=二十報告が可能となり、春季、夏季研究集会での
報告数は確保できる。(これは現時点の案で、実際には別のかたちになる可能性
もある)
 参加費は基本的に取らないこととするが、財政的に困難な場合は徴収もありうる。
ただし、2006年度は参加費を徴収しなくてもすむ見込みである。
 関西部会大会の日程、会場はすでに速報でお知らせしたように、六月四日(日)、
関西大学百周年記念会館と決定している。事務局では、二月上旬前後から自由論
題募集を開始し、三月中旬に締め切り、四月中旬には司会、コメンテーターおよび
共通論題企画を確定させ、できれば四月連休前にプログラムが会員の手元に届く
ようにしたいと考えている。多くの会員が積極的に報告申込みを寄せられるようお願
いしたい。申込みにあたっては、これまでと同様に関西部会管轄地域以外の地域の
会員の申込みも受け付ける。ただし、関西部会大会という性格上、申込み多数の場
合は関西部会管轄地域会員の申込みを優先する場合があることをお含みおき願い
たい。(文責・瀬戸宏)



〔組織状況〕1月19日現在連絡所受理分
総会員数704名(住所不明者含む)


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編集担当  新谷秀明(西南学院大学)