第2報告(11:10〜12:00)
「中国北方漁村における家族と婚姻の変容」
王慧琴(慶応大学)
五十年代から、中国社会では政治、経済、文化のあらゆる分野に激しい変化が起こった。勿論、中国の農村社会にも例外なく大きなインパクトを与えた。このような政治運動の中で、宗族関係や家族構成も大きく変化しつつある。今までの先行研究では、宗族組織が発達した東南地域に関する研究が比較的に多かったが、北方地域についての研究は殆ど空白な状況である。本報告ではかつて経済的にめぐまれていなかった北方漁村の調査に基づいて、北方地域の宗族や家族の構成、機能及びその変化を分析する。宗族や家族の変化が婚姻に与える影響を明らかにすることを目的とする。中国においては、漁村地域の社会人類学的研究はこれまで比較的手薄であったといえる。
 北方漁村社会では、血縁組織、特に宗族組織は伝統的社会組織の主要的な役割を果たしていた。しかし、政府の行政組織を作り上げてから、宗族組織の機能はますます弱体化していった観がある。また、生活単位「家族」は男性の家父長の支配から男女平等、更に女性が財産権を実質的に握るように変化した。このような変化を通して、婚姻にもたらす変化の過程を論じたいと考える。
また、婚姻態様の変容とその社会的背景を観察することにより、社会的な要因も究明したいと考える。