参考資料
共通論題「21世紀中国のグローバル化とナショナル・アイデンティティ ―新「中体西用」論―」
の趣旨説明
6月2日関東理事会で承認され関西・西日本両理事会で了承された共通論題について、理事長・常任理事の了解と7月7日関東理事会の承認を得て、実行委員会で主題と副題を入れ替えさせていただいた。
会員各位にご了承をお願いしたい。
1.この主題は、中国の思想界で1997年末頃から公然化した、紅衛兵世代やその下の世代の知識人の自由主義派と新左派との論争を、「グローバル化とナショナル・アイデンティティもしくはナショナリズムとの相剋の問題」ととらえた見解に依拠した。
新左派(汪暉)は、生産と貿易のグローバル化(「全球化」)の過程で、国際資本と中国の資本支配者(=政治権力支配者)との相互浸透・相互衝突によってもたらされた、体制的腐敗や社会的不公正を、制度革新(崔之元:旧来の社会主義体制の合理的要素を改革に活用せよ)によって阻止すべきだと主張した。毛沢東の思想を、「反(資本主義)近代の近代」として評価した。
自由主義派(朱学勤)は、次のように主張した。
中国はまだ資本主義段階にもグローバル化にも入っておらず、内の旧体制・旧イデオロギーを克服し、対外開放を拡大・深化すべきである。中国の病気は西洋病・市場病ではなく、中国病・権力病である。中国はフランス→ロシア→中国と伝播した近代左派政治文化という脇道から離脱して、「世界主流文明」に回帰すべきである。市場メカニズムを批判するのではなく、それを改革して、政治体制改革に発展させるべきである。
2.両派の論争は、1980年代における、「四項基本原則」(中体)と「四つの現代化」(西用)の結合を主張したケ小平と、「西体(現代化。現代工業大生産の生産様式・生活様式と思想体系の導入)中用(民族化。技術・社会構造と文化・心理構造を含む中国の実際情況・実践活動への適用)」を主張した李沢厚との、観点の相違を引き継いでいると思われる。さらに、中国革命における反帝国主義(救亡)と反封建主義(啓蒙)の矛盾という問題につながると考えられる。
3.文化の領域におけるこの論争は、経済の領域や政治の領域における、グローバル化・市場化の一層の進展と経済改革、失業対策と社会保障制度の整備、市場経済のなかで生き延びるための共産党のイデオロギーと組織の変化、愛国主義や精神文明の鼓吹、政治改革の見通し、等の問題と密接に関連すると思われる。
以上のように、中国の根本問題に本格的に取り組んだこの主題を手がかりとして、現代中国の政治、経済、文化について、個別的にまた総合的に、広く深く研究され、熱心に討論されることを、期待したい。
2001年8月 大会実行委員会